転職理由は本音で伝えていいのか|本音でいい。ただ、それだけでは説明にならない

転職理由を聞かれたとき、どこまで正直に話していいのかで迷う人は多いと思います。人間関係、評価への不満、給与、働き方——理由が現職への不満に寄っているほど、そのまま言っていいものか判断がつかなくなります。

結論から言えば、本音で伝えて構いません。

ただ、それで話が終わるわけではありません。たとえば「今の職場がしんどい」。これも本音ですが、聞いた相手にはなぜしんどいのかも、何が変われば解決するのかも分かりません。 つまり、本音を言うことと、転職理由を説明できることは別です。

この記事では、本音を説明に変えるために何をするのかを整理します。

先に結論:本音でよい。ただ、深掘りは自分でやる

  • 転職理由は、自分の中での真実を伝えるのが基本です。隠すことを勧める理由がありません
  • そもそも、隠すと判断してもらえません。 企業は考え方が自社に合うかを見ているので、こちらが開示しないと判断の材料がそろいません
  • ただ、本音をそのまま出せば伝わるわけでもありません。必要なのは深掘りで、それは自分でできる作業です
  • 「説明になっている」状態とは、その職場にいた人にしか分からない事情を持ち出さずに、聞いた相手が「だったら外を見るのもありだ」と思える状態です
  • 深掘りの方向は2つ。今の転職理由の抽象度を上げることと、他の環境でも同じことが起きないかと視野を広げること
  • 面談や面接で説明するのは転職理由だけではないので、経歴のほうも棚卸ししておくと話が早くなります
  • 志望動機は転職理由と地続きです。転職理由が薄いと、志望動機は会社案内の言い換えになります
  • なお、転職エージェントを使う場合だけ、工程がもう一段増えます。 この点は記事の後半にまとめました

順に見ていきます。

隠しても、そもそも判断してもらえない

「正直に言うと不利になるのではないか」——そう考えて、角が立たない言い方を探したり、前向きな理由に言い換えたりする方向に力が向きがちです。

ただ、この方向には得るものがほとんどありません。理由は3つあります。

ひとつは、隠すと、そもそも判断してもらえないことです。多くの企業は、選考の中でスキルとは別に「この人はどういう物の考え方をしているのか」を聞き出そうとしています。そのうえで、その考え方が自社の考え方——風土や社風と呼ばれるもの——に合っているかを見ています。合っているかを判断するには、こちらが開示しないと材料がありません。 そして、言葉になっていないものは開示できません。

ふたつめは、判断の材料が自分の側でも減ることです。何が起きていて何を変えたいのかが出てこなければ、そもそも自分がどこに応募すべきかの基準が立ちません。相手を納得させる前に、自分の判断が止まります。

3つめは、取り繕えたとしても、その先が続かないことです。面接は多くの場合1回では終わりません。本心とズレた説明は回を重ねるほど揺れますし、揺れが出ると、企業側は転職理由の中身より前に「この人の話は信用できるのか」という見方をします。

「説明になっている」とは、どういう状態か

では、本音をどう扱えば説明になるのか。基準はひとつです。

その職場の中にいた人でないと分からない事情や事象を持ち出さずに、聞いた相手が「確かに、だったら転職活動で外に目を向けるのもありだよね」と思える状態。 これが「説明になっている」ということです。

逆に言えば、社内の人にしか通じない話——特定の上司の名前、その会社独自の制度の運用、部署間の力関係——を前提にした説明は、どれだけ本当のことでも説明として機能しません。聞いた相手には検証のしようがないからです。

言うのは簡単ですが、ここを言葉にするには時間がかかります。よくある3つの転職理由で、実際にどう深掘りするかを見ます。

「過度な残業が恒常的にある状態が辛い」

残業はしたくてするものではないので、当然の理由です。そのうえで考えるべきは、自分の働き方(効率、つまり生産性)に問題はないかと、自分の働きかけ(協調力・巻き込み力)に問題はないかの2点です。

知識や経験が足りないことで生産性が低く、在籍企業にとって価値のある労働を提供できていないパターンもあります。自分のやり方に固執して、成果が出ている人の進め方を受け入れず、時間と労力はかかるのに成果が上がっていない。あるいは、標準化すればチームで分担できるところを属人化させてしまい、結果として自分でやらないといけない状態を自分で作っている。

こうしたことを客観的に判断したうえで、なぜ残業が恒常的に発生してしまっているのかを、第三者が聞いても納得できるところまで深掘りします。

「扱っているサービスに関心がもてない」

できれば誰しも好きなサービスを扱いたいので、これも当然です。考えるべきは、関心があるサービスは何か。それは何故かと、関心の有無と、サービスを提供することの関係性は何かの2点です。

関心がないから辞めたい、というのは筋が通っていたか。関心を持てないというなら、何だったら関心を持てるのか。ここが考えられていないと、面接では「結局、隣の芝生が青く見えているだけなのでは」という見方をされてしまいます。

好きなサービスを扱いたいというのは当然の欲求で、権利でもあります。ただ、その権利を行使するためにも、雇用されているということを正しく、フラットに認識しておく必要があります。

「人間関係の問題を解消したい」

嫌いな人がいる職場に一瞬でもいたくない、というのは自然な感覚です。ただ、考えないといけないのは組織は人の集まりであり、人間関係の問題はどの組織にも必ずあるという1点です。

ここでもう一段深掘りしたいのは、今の人間関係は、自分の価値観や大事にしたいどの部分とのミスマッチが大きくて、解消がし難い状態なのかということです。ここが言葉になっていれば、次の職場を選ぶときの基準にもなります。

深掘りの方向は2つ——抽象度を上げる、視野を広げる

3つの例に共通しているのは、深掘りの方向が2つしかないことです。

ひとつは、今考えている転職理由の抽象度を上げてみること。 「あの上司と合わない」を「自分が大事にしている進め方と、求められる進め方が噛み合っていない」まで上げる、というような作業です。抽象度が上がると、社内の事情に頼らずに説明できるようになります。

もうひとつは、他の環境において同じことが起きる可能性はないか、と視野を広げてみること。 転職先でも同じことが起きるなら、それは転職で解決する問題ではありません。逆に、ここを確かめておけば「では次はどこを見るべきか」がはっきりします。

この2つが済んでいると、転職理由がそのまま応募先を選ぶ基準になります。 面接で説明するために深掘りするというより、自分の判断のために深掘りする作業だと考えるほうが近いです。

なお、ここで出てきたものを軸として立てるところから先は、この記事ではなく転職先の決め方のほうで扱っています。その軸が自分の基準になっているか、現職との比較で動いているかの見分け方も、そちらです。

経歴のほうの準備——経験の棚卸し

面談や面接で説明することになるのは、転職理由だけではありません。これまで何をしてきたのかを、相手が分かる形で話せるかどうかも同じくらい聞かれます。こちらの準備が経験の棚卸しです。

まず、時系列に書き出す

最初にやるのは、整理ではなく書き出しです。所属した組織の単位で、時系列に並べます。 項目は次の4つです。

  • どんなミッションを持つ組織だったのか
  • その中で自分はどの役割だったのか
  • 何をしてきたのか
  • そのときの成果は何だったのか

この段階では、まとめようとしないことです。順番も評価も気にせず、思い出した順に書き足していって構いません。先に構造を決めてから埋めようとすると、枠に入らない経験が落ちます。

束ねる——「どこに・何を・どの程度」

書き出した一覧を眺めて、束ねられる単位にまとめます。 束の作り方は3つの軸です。

中身
どこに業界。どの領域に向けた仕事だったか
何を提供価値。顧客に価値を届けるまでの、どのプロセスを担ったか
どの程度期間と主な実績

このうち「どこに(業界)」は、営業のようなフロント業務の人だけの話に見えますが、そうではありません。自分が所属している組織の業界も、ドメイン知識です。 社外との接点が少ない技術職でも、ここは必ず存在します。この点は職務経歴書の書き方で詳しく扱っているので、そちらを見てください。

「何を(提供価値)」は、担当した業務名を並べるより、判断の対象で層を分けて考えると輪郭が出ます。経営に関わる判断だったのか、事業や組織や人に関わる判断だったのか。同じ「設計」でも、決められた仕様の中で手を動かしていたのか、仕様そのものを決める側にいたのかで、束の名前は変わります。

束は、会社の区切りとそろいません。 同じ会社の中でも担当した領域が変われば束は分かれますし、転職をまたいで同じ束が続いていることもあります。時系列のままだと、いちばん言いたい経験と実績が構造の中に埋もれます。埋もれる場所が社数の多さなのか在籍期間の長さなのかという違いがあるだけです。

束ねた結果をどう書類に落とすかは、職務経歴書の書き方のほうで扱っています。この記事の目的は書類ではなく、口頭で話せるようにしておくことです。

志望動機は、転職理由と地続き

面接では、転職理由と志望動機の両方を聞かれます。別々に用意しようとする人が多いのですが、この2つは地続きです。

転職理由が「何を変えたいか」で、志望動機は「なぜその変え方が、この会社でできると思ったか」です。前者が定まっていれば、後者は自然に続きます。

逆に、転職理由が「今がしんどい」で止まっていると、志望動機は会社案内に書いてあることの言い換えになります。事業内容が魅力的だ、成長性がある、風通しが良さそうだ——どれも当の企業がすでに知っていることで、判断材料になりません。ここが薄いことは、面接では簡単に見えます。

転職エージェントを使うなら、工程がもう一段増える

ここからは、転職エージェントを使う場合だけの話です。直接応募であれば、自分が話した内容はそのまま相手に届くので、ここまでの内容で足ります。

エージェントを介す場合は、その手前に一段、工程が入ります。面談で話した転職理由は、そのまま企業に転送されるわけではありません。エージェントが受け取り、企業向けの言葉に組み立て直したうえで先方に渡ります。推薦書という書類の形をとることもあれば、口頭や短い文面で伝えられることもあります。どの形をとるかは会社によって違います。

なお、変換の精度は、渡した材料の精度に引きずられます。 ここまでの深掘りは、その材料を作る作業でもあります。「今の職場がしんどい」だけを渡すと、どう組み立て直しても厚みは出ません。

伝わり方を押さえる、ひとつの質問

この工程に対して、求職者側から手をかけられる場所がひとつあります。

推薦書があるかどうか、企業への伝え方をどうするかは、エージェントごとに違います。だから「推薦書を見せてください」という言い方は、会社によっては噛み合いません。どの会社にも通じる最も普遍的な一手は、転職理由を一通り伝えたあとに、次のように聞くことです。

今までの話の中で、企業側に伝える上でネックになりそうな話ってありましたか?

この一言で、担当者がこちらの話をどう受け取ったかが分かります。測りにいく質問ではなく、確認のための質問なので、身構えずに聞けるのも利点です。

明確な答えが返り、開示の仕方まで提案が入った場合

そのエージェントは信頼できます。提案の中身を聞いて、事実とズレていないかだけ確認すれば十分です。伝え方の設計は任せて構いません。

曖昧な答えしか返ってこない、または「問題ないです」で終わった場合

まず、履歴書・職務経歴書以外に企業へ渡る情報や資料があるかどうかを確認します。そのうえで、形に応じて約束を交わしておきます。

推薦書を提出する形なら——「推薦書を作成されたら、認識に齟齬がないか確認したいので共有してください」

口頭や文面で伝える形なら——「どのような内容を伝えるのか、認識に齟齬がないか確認したいので、後日メールでもいいので共有してほしいです」

どちらの言い方も、相手を疑っている形になっていないのが大事なところです。確認したいのは担当者の能力ではなく、認識が合っているかどうかです。実際、伝え方の巧拙より、そもそもの認識がずれていることのほうが多くあります。

受け取った内容の、どこを見るか

共有してもらった内容は、読んで終わりにせず、次の2点を見て返します。

  • 事実と乖離したまとめ方になっていないか(話していない内容が足されていないか、意味が変わっていないか)
  • 補足してほしいところが割愛されて、雑になっていないか

気になる箇所があれば、そのまま伝えて直してもらいます。これは相手の仕事に口を出すことではなく、書類選考に出る前に事実を合わせておくという作業です。

面接まで、同じ内容で通す

ここまで押さえておくと、面接での説明と、企業側がすでに受け取っている情報がそろいます。

エージェント経由の面接は、企業側の期待値が上がった状態から始まります。そのぶん、事前に伝わっている内容と面接での説明に食い違いがあると、直接応募のときより目立ちます。この点は転職エージェント経由の面接対策のほうで扱っています。

よくある質問

人間関係が理由の転職でも、そのまま言っていいですか
そのまま言って構いません。ただし、そこで止めないことです。組織はどこも人の集まりなので、人間関係の問題自体はどの職場にもあります。「自分の何とのミスマッチが大きくて、解消がし難い状態なのか」まで言葉にしておくと、次の職場を選ぶ基準にもなりますし、面接での説明も愚痴の形になりません。
ネガティブな転職理由を、前向きな言い方に変換したほうがいいですか
言い換えること自体が悪いのではなく、事実から離れると後で戻れなくなるのが問題です。抽象度を上げる方向の言い換えは有効で、たとえば「あの上司と合わない」を「自分が大事にしている進め方と、求められる進め方が噛み合わない」にするのは整理にあたります。一方、事実にない意欲を足すのは、掘り下げられた時点で止まります。
深掘りすると、自分にも原因があるという話になりませんか
なることもあります。ただ、それは自分を責めるための作業ではなく、他の環境でも同じことが起きるかどうかを見るための作業です。転職しても解決しない部分がはっきりすれば、転職で解決する部分もはっきりします。結果として、応募先の選び方が変わります。
棚卸しはどこまでやれば足りますか
束が3本前後に収まって、それぞれについて「どの業界に対して・どのプロセスを・どのくらいの期間」が言える状態が目安です。すべての業務を書き出す必要はありません。逆に、束が1本も立たないまま面接に臨むと、経歴の説明が職歴の読み上げになります。
転職エージェントに、転職理由の言い方を決めてもらってもいいですか
提案をもらうのは有効ですが、決めるのは本人です。面接で話すのは自分なので、自分の言葉になっていない説明は、掘り下げられた時点で止まります。提案は「その表現で事実が言えているか」を確かめる材料として使ってください。

まとめ

  • 転職理由は、自分の中での真実を伝えるのが基本です。隠す方向に手をかけて得るものはほとんどありません
  • 隠すと、そもそも判断してもらえません。 企業は考え方が自社に合うかを見ているので、開示しないと材料がそろいません
  • ただ、本音をそのまま出せば伝わるわけでもありません。必要なのは深掘りで、それは自分でできる作業です
  • 「説明になっている」とは、その職場にいた人にしか分からない事情を持ち出さずに、聞いた相手が「だったら外を見るのもありだ」と思える状態です
  • 深掘りの方向は2つ。抽象度を上げることと、他の環境でも同じことが起きないかと視野を広げること
  • 残業なら自分の働き方と働きかけ、関心なら何だったら関心を持てるのか、人間関係なら自分の何とのミスマッチかまで見ます
  • ここが済むと、転職理由がそのまま応募先を選ぶ基準になります
  • 経歴のほうは棚卸しで準備します。時系列に書き出す → 「どこに・何を・どの程度」で束ねるの順です
  • 志望動機は転職理由と地続きで、転職理由が薄いと志望動機は会社案内の言い換えになります
  • エージェントを使う場合は、話した内容が企業向けの言葉に変換されてから届きます。 リスクが出るのは、この変換がうまくいかなかったときです
  • その工程を押さえる一手は、「企業側に伝える上でネックになりそうな話はありましたか」という確認です

転職理由をどう言うかは工夫のしどころのように見えますが、実際に手をかけられるのは言い方ではなく、その手前の深掘りのほうです。抽象度を上げて、他でも同じことが起きないかを確かめておく。 ここが済んでいれば、あとは聞かれたことにそのまま答えるだけで済みます。

出てきたものを軸として立てる手順は転職先の決め方、書類の形に落とす手順は職務経歴書の書き方にまとめています。